スーパーアプリ戦略~日本と海外事例について解説~

IT

スーパーアプリとは

気が付くと自分のスマホの中に色んなアプリがごちゃごちゃとあって気が滅入ることはありませんか?

でも実際に日常的に起動するアプリはせいぜい数種類ですよね。
そんな状況を改善するのが、今回のテーマでもあるスーパーアプリです。

スーパーアプリとは一言でいえば

様々なサービスを一つのアプリから利用できるように集約したアプリ

のことです。

なぜスーパーアプリが注目されるのか。
そして世界と日本のスーパーアプリの現状について紹介します。

スーパーアプリの登場の背景

機能の統合

あなたのスマホには普段使っていないアプリがいくつありますか?

もちろん使うタイミングがあるから入れているのでしょうが、
いざ使うときになって直ぐに使えますか?

IDやパスワードが必要なサービスもありますよね。
アップデートもしなければ使えないかもしれません。

しかし、一つのアプリの中に全ての機能が包括されていたらいかがでしょうか。

煩わしいユーザー登録も一度で済み、そのアプリについてのみ把握していればよいだけです。

しかし、いろいろな機能があってごちゃごちゃして分かりにくいのでは?
と感じる方もいるかもしれません。

これにはある視点が欠けています。

現在はアプリが乱立している分、一つ一つのアプリの中身はシンプルですが、
その分、スマホ自体がごちゃごちゃしている状態なのです。

1つのアプリに機能が集約されていれば、スマホもすっきりし、
ID管理もしやすく、一つ一つの機能をよりスムーズに使えるようになります。

それがスーパーアプリの意義になります。

そうしたユーザーにとって便利なアプリを作ろうというのが、
スーパーアプリ登場の背景にあります。

キャッシュレス化はスーパーアプリの1つの側面

PayPayやLINEPayに代表される何とかPayシリーズでは、幾度となく還元キャンペーンを行い、
ユーザーを取り込もうとしていたことは記憶に新しいですよね。

これらはキャッシュレス化の波として取り上げられていましたが、
大きな視点で見ると、

キャッシュレス化の波は
スーパーアプリ化の波の一部でしかありません

冒頭でも記載した通り、スーパーアプリは様々なサービスを包括したアプリです。
しかしアプリによって中核となるサービスが存在します。

そこにタクシーの配送や保険、証券サービスなど、
様々なサービスが付随しています。

決済サービスは使用頻度が高いので注目されますが、

スーパーアプリとは

日常生活で使う頻度の高いサービスを起点として、
様々な使用頻度の低いサービスまでワンストップで提供するアプリ

なのです。

この視点が抜けて、ただ流れに乗る為にキャッシュレス化だけを意識して
参入してきた企業は、決済サービスと共に搭載されるコンテンツやサービスによる競争に敗れ、
今後淘汰されていくでしょう。

世界のスーパーアプリ

アジア圏の強さ

こうしたテクノロジーはアメリカが常にトップを走っているイメージがありませんか?

実はスーパーアプリ化の波が進んでいるのはアジアが中心です。

先進国ではPCからモバイルへ徐々に移行していく中で、徐々に新しいサービスが生まれていったため、
独立したサービスが乱立した状態になっています。

しかし、新興国ではこうした前例をベースとしながら、一気にモバイル化が進んだため
スーパーアプリ化という点ではアメリカよりも優位に立っています。

では現在、どの様なアプリがあるのか紹介していきます。

中国

スーパーアプリの代表とも言えるのが、
WechatとAliPayです。

Wechatは中国版LINEと思って頂ければイメージしやすいかと思います。
メッセージ機能に加えて、Wechatはミニプログラムという機能を使用することができます。

ミニプログラムとはWechatの様なプラットフォームとなるアプリ上で使用できる機能のことで、
アプリと違ってインストールする必要はなく、アプリと同じ様な機能を使うことができます。

既に100万個以上のミニプログラムがあると言われており、
レストランの予約やタクシーの配車、もちろん決済機能も有しています。

AliPayも決済機能に加え、飛行機の予約や保険などのミニプログラムを統合しています。

中国ではこの2アプリがスーパーアプリの中心とされていましたが、
近年では「美団点評(メイトゥアンディエンピン)」も注目されています。

これは、ぐるなびと出前館が統合したようなサービスが中核で、
他のスーパーアプリと同様に、様々なミニプログラムを使用してホテル予約などを行う事ができます。

スーパーアプリの最先端を走る中国のIT事情については
以下の記事にもまとめていますので興味のある方はぜひこちらもご覧ください。

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他のアジア圏代表

その他、スーパーアプリとして有名なのは以下のアプリです。

✅シンガポールのGrab
✅インドネシアのGo-Jek
✅インドのPaytm

こちらは馴染みのある方は少ないかもしれませんが、
配車やライドシェア、映画チケットの購入など様々なことをこれらのアプリでも行うことができます。

日本のスーパーアプリ戦略

LINE×PayPay

日本のスーパーアプリ候補と言えば、LINEとPayPayが2強と言えるでしょう。

スーパーアプリの特色としてミニプログラムの使用が挙げられます。
LINEでもPayPayでも既にいくつかのミニプログラムが使用できますが、

LINEは「LINE mini app」というサービスをリリースすることを宣言しています。

LINE mini appはLINEアプリ上で使用できるミニプログラムを企業などが開発して
公開できるようにするサービスです。

LINE mini appはアプリを開発する企業にとっても
開発コストが安い、LINEからの誘導なのでユーザーに使ってもらいやすいというメリットがあります。

そのため、サービスが始まれば、多くの企業がLINE上で動かすミニプログラムの開発を進め、
一気に普及されてスーパーアプリになれる可能性を秘めています。

そしてPayPayについても、オープンなプラットフォームになるかは定かではありませんが、
様々なミニプログラムを有するスーパーアプリを目指して日々進化を続けています。


出典:ソフトバンク株式会社 2020年3月期 第2四半期決算

そして、両者の経営母体であるヤフー(Zホールディングス)とLINEは2019年に経営統合しています。

日本の2強ともいえる、スーパーアプリ候補が統合すればハイパーアプリが生まれるのでは?
なんて思ってしまいそうですが、そう簡単な話ではありません。

様々な機能を有することで、アプリをダウンロードする機会は減り、その点においてユーザーの利便性は上がります。

しかし、シンプルイズベストという言葉もある通り、
スーパーアプリの機能の量は、返ってユーザーにとって使いにくいものになってしまう可能性と隣り合わせです。

その為、下手に両者を統合するとユーザーの利便性を損ねる可能性もあることから、
両者を統合させるのではなく、併存させる形で

2つのスーパーアプリを有するリーダー企業としての道を歩む

のではないかと私は思っています。

巨人への挑戦

これはスーパーアプリに限った話ではありませんが、

FAANG+M(Facebook,Amazon,Apple,Netflix,Microsoft)

の脅威は絶大です。
彼らの時価総額は50兆円~100兆円規模なのに対し、ヤフー・LINEの時価総額の合計は3兆円ほどです。

まだまだ大人と子供ほどの差があります。

強大な相手に立ち向かう為には、体を大きくしていく必要があります。

ヤフー・LINEに限らず、企業の統廃合が進む中
様々なサービスが統合されて、スーパーアプリ化されていくのはいわば必然なのかもしれません。

日本の今は小さな体が、いつの日か
巨人に勝てる日はくるのでしょうか。